「未来」の影に潜むもの ～青森県産業技術センター「みれるンデー2025」に寄せて～
去る7月2日、青森県産業技術センターにて「みれるンデー2025」と銘打たれたイベントが開催された。最新の産業技術に触れ、未来への希望を語るその趣旨は、いかにも現代的で、ある種の進歩主義に彩られたものと言えよう。しかし、こうしたイベントが華やかに開催される裏側で、私たちは一体何を見ようとしているのか、そして、何を見失っているのか、改めて問い直す必要があるのではないか。
確かに、科学技術の進歩は私たちの生活を豊かにし、多くの困難を乗り越える力を与えてくれた。しかし、その進歩の恩恵は、常に万人に公平に分け与えられてきたわけではない。むしろ、新たな格差を生み出し、あるいは既存の社会構造をさらに不安定化させる側面も否定できない。今回のイベントが、未来の産業像を提示する一方で、それによって置き去りにされる人々や地域がないか、という視点がどれだけ盛り込まれていたのか、報道からは読み取りきれない。
例えば、AI（人工知能）やIoT（モノのインターネット）といった言葉が躍る中で、それらの技術が導入されることで、従来の産業構造や雇用がどのように変化するのか。特に、歴史と伝統に根差した地域産業が多い青森県において、こうした革新が地域社会にどのような影響を及ぼすのか。単に「効率化」「高度化」といった言葉で片付けられる問題ではないはずだ。地域に暮らす人々の生活基盤、そして文化そのものにも関わる問題として、慎重な議論と、きめ細やかな配慮が求められる。
我々世代が大切にしてきたもの、例えば地域コミュニティの絆や、先人が培ってきた知恵といったものは、テクノロジーの進歩という名の眩い光の前では、時に色褪せてしまうかのように見える。しかし、こうした「見えない資産」こそが、現代社会の歪みを是正し、真の豊かさを築く上で不可欠な要素ではないだろうか。新しい技術に目を奪われるあまり、足元にある大切なものを失ってしまうことだけは避けたいものである。
「みれるンデー」という言葉の響きは、希望に満ちている。しかし、その「みれる」未来が、一部の人々だけのものであってはならない。全ての県民が、そして次世代の子どもたちが、安心して暮らせる未来を「みれる」ように、技術の進歩はそのための道標であるべきだ。今回のイベントを契機に、青森県が今後どのような「未来」を描き、そしてそれを誰と共に実現していくのか、その真摯な姿勢を注視していきたい。
青森県産業技術センターで「みられるデー2025」開催！ものづくりの楽しさを体験しよう！,青森県産業技術センター
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