オンライン巡検ツアー、学びに新たな風を吹き込む
近年、大学の教育現場において、キャンパスに閉じこもるだけではない、多様な学習機会の提供が求められている。そんな中、インターナショナル・ツーリズム・ビジネスカレッジ（ITB）が2025年7月1日に発表した「オンライン模擬授業ツアー」は、まさに時代の要請に応える画期的な試みと言えるだろう。この取り組みは、世界中のトップクラスの農場をオンラインで巡り、現場の生の声を聞くというもの。学生新聞としても、この新しい学びの形がもたらす可能性に大きな期待を寄せている。
これまで、農業や畜産業といった実学に触れる機会は、フィールドワークやインターンシップといった限られた形が中心であった。しかし、地理的な制約や費用の問題から、多くの学生が参加したくても参加できないというジレンマを抱えていたことも事実である。今回のオンラインツアーは、そうした障壁を打ち破り、学生に国内外の最先端の農業技術や経営ノウハウを、場所を選ばずに学ぶ機会を提供する。これは、まさに学習の民主化と言っても過言ではない。
特に注目すべきは、その対象が「世界の農家」であるという点だ。気候変動、食料問題、持続可能な農業といったグローバルな課題が山積する現代において、異文化、異環境における農家の取り組みから学ぶことは、学生の視野を大きく広げるだろう。例えば、砂漠地帯での灌漑技術、寒冷地での施設園芸、あるいはバイオテクノロジーを駆使した品種改良など、地球上の多様な場所で展開される「知恵」と「工夫」に触れることは、学生にとって何物にも代えがたい財産となるはずだ。画面越しであっても、農家の情熱や苦労、そしてそれらを乗り越えるための創意工夫に触れることで、教科書だけでは得られない、血の通った学びがそこにはあると確信している。
もちろん、オンラインならではの課題がないわけではない。現場の空気感や土の匂いといった五感をフル活用する体験は、どうしても直接的なものには及ばないだろう。しかし、だからこそ、このツアーは「導入」としての役割を果たすと考えられる。オンラインで興味を持った学生が、次に現地への訪問を志すきっかけとなるかもしれない。また、ITBが提供するインタラクティブな要素、例えばリアルタイムでの質疑応答などを最大限に活用することで、オンラインであっても深い学びへと繋げることが可能であるはずだ。
我々学生新聞は、このような新しい学びの形を積極的に発信し、応援していきたい。テクノロジーを駆使した教育革新は、学生の可能性を広げ、未来への扉を開く力を持っている。このオンライン巡検ツアーが、多くの学生にとって、農業という分野だけでなく、あらゆる学問分野への探求心を刺激する起爆剤となることを願ってやまない。そして、ITBのこの挑戦が、大学教育のあり方に新たな一石を投じることを期待する。
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