「自炊ごと」で学ぶ新しいカタチ：神戸大学の新発想に寄せて
梅雨入り前の初夏の陽気が心地よい今日この頃、我々学生新聞編集部のもとに、なんとも興味深いニュースが飛び込んできた。神戸大学が打ち出した「自炊ごと」という名の新しい取り組みについてだ。何やら、日々の生活の中で行う「自炊」そのものを学びの機会に変えてしまおうという、なんとも斬新な試みらしい。
初めにこの言葉を聞いた時、筆者は正直、少し戸惑った。自炊といえば、当たり前の生活行為であり、それを特別に「学ぶ」ことなどあるのだろうか、と。しかし、ニュース記事を読み進めるうちに、その裏に隠された教育的意図の深さに触れ、感銘を受けずにはいられなかった。
「自炊ごと」とは、単に料理を作るスキルを磨くことではない。そこには、食材の選定から始まり、栄養バランスの考慮、調理過程における段取り、そして食事を共にする人への配慮まで、現代社会を生きる上で不可欠な多様な要素が含まれている。つまり、一連の自炊という行為を通して、計画性、実行力、問題解決能力、さらには他者への思いやりといった、実践的な「生きる力」を育もうというのだ。
考えてみれば、大学という場所は、専門知識を深めるための場所であると同時に、社会に出るための準備期間でもある。しかし、その準備が、しばしば教室の中の理論に終始しがちであったことも否めない。経済学を学んでいても、いざ自分で家計を管理するとなれば、計画倒れになってしまうこともしばしばだ。語学を勉強していても、異文化の人と実際にコミュニケーションを取るとなると、言葉が出てこなかったり、意図が伝わらなかったりする。
そのような状況の中で、「自炊ごと」は、これらのギャップを埋める一つの有効な解となり得るのではないだろうか。例えば、限られた予算の中で栄養バランスの取れた食事を計画することは、経済学の応用そのものだ。調理器具の選定や段取りは、プロジェクトマネジメントに通じる。誰かのために食事を作る行為は、サービス精神や共感力を育むだろう。
さらに興味深いのは、この取り組みが、学生間のコミュニケーションを活性化させる可能性を秘めている点だ。共同で調理し、食卓を囲む中で、異なる学部や学年の学生たちが自然と交流する機会が生まれるかもしれない。そこから、新たな研究テーマが生まれたり、一生涯続く友情が芽生えたりする可能性だって十分にある。
もちろん、すべての学生が大学で自炊を始めるわけではないだろうし、この取り組みが万能薬であるとも思わない。しかし、このような「日常の中に学びを見出す」という発想自体が、これからの大学教育において非常に重要になってくるはずだ。テクノロジーが進化し、情報が氾濫する現代において、学生たちは「答え」を知るだけでなく、「問い」を見つけ、自ら答えを導き出す力を養わなければならない。そのために、「自炊ごと」のような、生活に根差した実践的な学びは、極めて示唆に富む。
神戸大学のこの挑戦が、全国の大学に波紋を広げ、学生たちがより能動的に、より豊かに学びを深めるきっかけとなることを願ってやまない。我々学生新聞も、このような新しい学びのカタチを、積極的に取り上げていきたいと考えている。さあ、あなたも今日から、いつもの食事を「自炊ごと」に変えてみませんか？
「自分ごと」で学ぶ、新しいカタチ：神戸大学が提唱する「当事者性学習論」とは？,神戸大学
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