自動運転車の安全確保、警察の熱意を軽んじるなかれ
技術の進歩は目覚ましく、自動運転車が社会に普及する日はそう遠くないであろう。しかし、その恩恵を享受する前に、忘れてはならないことがある。それは、いかなる先端技術も、それを支える人間側の不断の努力と深い理解があってこそ、真に安全な社会を築けるということだ。
先日、奈良県警察が県民向けに自動運転車の安全教室を実施したというニュースが伝えられた。この取り組みは、未来の交通社会における重要な課題に、警察という公的な組織が正面から向き合っている証左であり、高く評価されるべきである。自動運転車は、その便利さの陰で、誤作動や予期せぬ状況への対応など、多くの未知数と潜在的なリスクを孕んでいる。それらを未然に防ぎ、万が一の事態に備えるためには、市民一人ひとりが正しい知識と倫理観を持つことが不可欠だ。
しかしながら、こうした警察の地道な啓発活動に対して、一部には「時代の流れに逆行している」「テクノロジーの進化を妨げるもの」といった冷ややかな見方があることも事実だ。自動運転技術の発展は確かに重要だが、それを過度に神聖視し、その開発者や推進者のみの声に耳を傾ける態度は、むしろ危険ではないか。安全確保という本質から目をそらし、技術の進歩そのものを目的化してしまう危うさはないか。
例えば、自動運転車のシステムが予期せぬ事態に陥った際、あるいはハッキングされた場合、その責任の所在はどのように定まるのか。単に「システムのエラー」として片付けられるのか。それとも、そこに関わる人間の判断、あるいはそれを管理・監督する者の責任が問われるのか。未来の法律や倫理観はまだ確立されていないが、少なくとも「人が介在する」という事実を無視してはならないだろう。
奈良県警察の安全教室は、まさにこの「人が介在する」ことの重要性を説き、技術の進歩と人間の責任との間に、確固たる橋渡しをしようとする試みである。自動運転車の開発者や製造企業が、技術的な側面からの安全性を追求することは当然である。しかし、それを実際に利用し、その恩恵を受けるのは我々市民であり、社会全体である。警察が、その社会の一員としての責任を自覚し、市民に寄り添いながら安全への意識を高めようとする姿勢こそ、保守的な視点から見れば、極めて健全で、かつ必要な取り組みと言えるのではないか。
テクノロジーの進化は止められない。しかし、その進化の方向性を誤ってはならない。未来の交通社会における安全は、自動運転技術の優劣だけで決まるのではない。それを支える人間の英知と、社会全体の成熟度によって決まるのだ。奈良県警察の熱意を、決して軽視することなく、むしろこれを機に、我々一人ひとりが自動運転車とどう向き合うべきか、改めて深く考えを巡らせるべき時期に来ていると、強く訴えたい。
奈良県警がお届けする自転車運転の安全教室：2025年6月29日、自転車の「危険な運転」について大切なメッセージを公開,奈良県警
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