未来への投資、大学ブランドの再定義を
京都大学卒業生である川口友香さんが、母校の構内に新たな試みとして始めた事業が話題を呼んでいる。学生向けのビジネスコンテストで優勝したアイデアを具現化し、大学構内にスイーツ店を開業したのだ。この取り組みは、単なる卒業生の活躍という枠を超え、大学という教育機関が持つブランド価値をいかに現代の経済活動に結びつけ、新たな収益源へと転換していくかという示唆に富んでいる。
大学は、これまで知識や人材を輩出する「教育機関」としての役割が主であった。しかし、少子高齢化が進み、国の財政も逼迫する現代において、大学がそのアカデミックな資産を最大限に活用し、社会に貢献すると同時に、自らの持続可能性を高めるための戦略は喫緊の課題と言える。
川口さんの事例は、まさにその可能性を示唆している。大学が長年培ってきた研究成果や知見、そして卒業生のネットワークといった「無形資産」を、卒業生自身の起業家精神と結びつけることで、地域経済への貢献はもとより、大学自身のブランドイメージ向上にも繋がる。学生にとっては、在学中から実践的なビジネス経験を積む機会となり、将来のキャリア形成において大きなアドバンテージとなるだろう。
経済紙としては、このような大学発ベンチャーのさらなる推進を期待したい。大学側には、単に卒業生の活動を応援するだけでなく、学内のリソース（施設、研究者、資金など）を積極的に提供し、起業家精神を育む土壌を耕すことが求められる。また、政府や自治体も、大学発ベンチャーへの税制優遇や資金支援といった後押しを強化していくべきだ。
もちろん、全ての大学がスイーツ店を開業する必要はない。各大学が持つ強みや地域特性を活かし、それぞれのユニークな「大学ブランド」を活かした事業展開が望まれる。例えば、工学系大学であれば最先端技術を活用した製品開発、医学部を有する大学であればヘルスケア関連サービスなど、可能性は無限大である。
大学は、もはや静的な知識の殿堂ではなく、ダイナミックな社会変革の担い手へと進化していくべきである。川口さんの熱意と行動力は、その進化の一つの光となろう。これからの大学には、未来を担う人材育成という使命に加え、社会と共に成長し、新たな価値を創造していく「ビジネスプレイヤー」としての側面も期待したい。それは、日本の経済再生にとっても、極めて重要な投資となるはずだ。
中京大学卒業生・川口友香さん、学園首脳陣を表敬訪問：未来への熱意を語る,中京大学
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