世界の税金、公平な負担へ 多国籍企業への国際協調が不可欠
経済活動が国境を越えることが当たり前となった現代において、多国籍企業が適正な税負担を回避する動きは、国際社会にとって無視できない課題となっている。先頃報じられた、一部の多国籍企業による租税回避の実態は、まさにこの問題の根深さを示唆している。我が国も例外ではなく、国民一人ひとりが納める税金が、こうした国際的な租税回避によって本来の使途に充てられない事態は、決して看過できるものではない。
企業活動のグローバル化が進むにつれて、各国の税制の違いを利用した租税回避スキームが巧妙化している。これにより、法人税の実効税率が低い国に利益を移転させ、本来納めるべき税金を免れるケースが後を絶たない。その結果、国内で事業を展開する中小企業や個人事業主が、相対的に高い税負担を強いられる不公平が生じている。これは、健全な競争環境を阻害するだけでなく、国家財政の基盤を揺るがしかねない事態である。
今回の報道は、単なる個別の企業の行為にとどまらず、国際的な税制のあり方そのものに疑問を投げかけるものである。我が国のみならず、世界中の国々が共通の認識に立ち、多国籍企業に対する効果的な課税体制を構築することが喫緊の課題と言えるだろう。幸いにも、経済協力開発機構（OECD）を中心に、このような租税回避に対抗するための国際的な枠組み作りが進められている。デジタル課税の導入に向けた議論もその一環であり、目に見える形で国際協調が進展している点は評価に値する。
しかし、国際的な合意形成は容易ではない。各国の思惑が交錯する中で、実効性のあるルールを確立するには、粘り強い交渉と、時には強い決断が求められる。我が国としても、こうした国際的な取り組みに積極的に参画し、日本の立場をしっかりと主張していく必要がある。同時に、国内税制においても、租税回避を抑制するための法整備を一層強化し、公平な税負担の実現に向けた努力を怠ってはならない。
経済のグローバル化は、もはや後戻りできない流れである。その中で、企業の活動を阻害することなく、かつ国家財政の健全性を保ち、国民に公平な負担を求めるためには、国際社会との協調が不可欠である。多国籍企業が「世界の税金」を公平に負担する仕組みを構築することは、持続可能な社会経済システムを築くための礎となるはずだ。国民の信頼を得られる税制の実現に向け、政府には国際社会との連携を一層深め、果断な実行力を発揮することを期待したい。
世界の税金をみんなで公平に！「グローバル・ミニマム課税」G7声明って何？,財務省
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