金融庁の「プロ向け」資産運用サービス、本当に「国民」の手に届くのか？
金融庁が打ち出した、いわゆる「プロ向け」の資産運用サービス拡充案。耳障りの良い言葉が並び、「より便利に、より安心して」というフレーズは、一見すると国民全体の資産形成を後押しする画期的な一手のように響く。しかし、その実、この施策は本当に一般層へと開かれた門戸となるのだろうか。それとも、一部の富裕層や金融リテラシーの高い層にのみ恩恵が行き渡り、資産格差をさらに拡大させる要因となるのではないか。筆者は強い懸念を抱かざるを得ない。
確かに、プロの知見を活用した質の高い運用サービスへのアクセスは、多くの個人投資家が望むところだろう。しかし、ここで問われるべきは、その「プロ向け」という言葉に隠された壁の高さである。一体、どのような基準で「プロ」と定義されるのか。最低投資金額はいくらになるのか。そして、高度な金融知識を持たない一般国民が、これらのサービスを理解し、安心して利用できるような環境整備は本当に進むのか。
もし、今回の施策が、単に既存の富裕層向けのサービスを少しだけ手軽にしたに過ぎないのだとしたら、それは「国民全体の資産形成」という壮大な目標とは程遠い。むしろ、情報格差や知識格差がそのまま金融サービス利用格差に繋がり、資産形成の機会を奪う「新たな壁」を生み出す危険性すらある。
金融庁には、この施策の真の受益者を明確にし、その恩恵が真に「国民全体」に広がるための具体的な道筋を示す責任がある。サービスへのアクセスを容易にするだけでなく、金融リテラシー向上のための包括的な教育プログラム、そして何よりも、個人投資家が不利にならないような情報公開の徹底と、悪質な業者から国民を守るための厳格な監督体制の強化が不可欠である。
「プロ向け」という言葉の誘惑に惑わされず、この施策の根幹にある「国民の資産形成への貢献」という理念が、決して絵に描いた餅で終わらないよう、私たちは引き続き目を光らせなければならない。金融庁の次の一手に、国民の切実な願いが込められていることを、改めて強調したい。
資産運用、もっと便利で安心に！ 金融庁が「プログレスレポート2025」を公表,金融庁
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