鈍化する資源開発、問われる国内鉱業の持続可能性
先日発表された三井金属鉱業の決算報告は、我が国の資源開発を取り巻く厳しい現実を改めて浮き彫りにした。世界的な資源価格の低迷に加え、国内における新規鉱山開発の遅延や既存鉱山の操業コスト増大といった要因が重なり、同社の鉱業部門は厳しい収益環境に置かれていることが示唆された。これは、三井金属鉱業に限らず、国内の鉱業全体が直面する構造的な課題であり、経済紙としては無視できない論点である。
かつて「国土の６割が鉱脈」と謳われた我が国も、高度経済成長期を経て、多くの有望鉱床の開発は一段落した。むしろ、近年の資源開発においては、海外での大規模プロジェクトへの参画や、レアメタル・レアアースといった戦略的希少鉱物の確保が焦点となっている。しかし、今回の決算報告は、国内での資源開発がいかに困難な状況にあるかを物語っている。
国内での新規鉱山開発が滞る背景には、複合的な要因が存在する。第一に、環境規制の強化や地域住民との合意形成の難しさなどが挙げられる。資源開発は地域経済の活性化に貢献する側面がある一方で、環境への影響や景観への配慮が不可欠であり、これらの課題をクリアするための時間とコストは決して少なくない。第二に、国際市場における資源価格の変動リスクである。たとえ有望な鉱脈が発見されたとしても、価格が低迷すれば採算が合わず、開発自体が見送られるケースも少なくない。これは、資源開発産業全体に共通する宿命とも言える。
しかし、だからといって国内の資源開発を諦めるわけにはいかない。地政学的なリスクが高まる現代において、安定的な資源供給網の確保は国家安全保障にも関わる重要課題である。特に、自動車産業や先端技術分野で不可欠なレアメタルなどの国内での生産基盤を維持・強化することは、経済的自立度を高める上で喫緊の課題と言えるだろう。
では、我が国の鉱業は今後どのように進むべきか。経済紙としては、以下の点を提言したい。
まず、技術革新によるコスト削減と効率化の追求である。AIやIoTといった先端技術を鉱床探査や採掘プロセスに導入することで、生産性を向上させ、採掘コストの低減を図る必要がある。また、深部探査技術の高度化や、これまで採掘が困難とされてきた低品位鉱床からの有効成分回収技術の開発も、新たな鉱床開発の可能性を広げるだろう。
次に、行政による支援体制の強化が求められる。資源開発に関する許認可プロセスの迅速化や、環境アセスメントの合理的な実施、さらには、初期投資リスクを軽減するための財政的支援や税制優遇措置なども検討すべきであろう。これは、企業の自助努力を促すと同時に、長期的な視点に立った産業育成策として捉えるべきである。
最後に、リサイクル技術の高度化と循環型社会の構築である。国内で産出される鉱物は限られている。しかし、使用済み製品からのレアメタル回収や、鉱山廃棄物からの有価物抽出といったリサイクル技術をさらに進展させることで、資源の有効活用と国内での資源供給量を補完することが可能になる。これは、鉱業の新たなビジネスモデルを構築する上でも重要な視点である。
三井金属鉱業の決算報告は、単なる一企業の業績にとどまらず、我が国の鉱業の将来を占う上での警鐘と受け止めるべきである。この困難な状況を乗り越え、持続可能な資源開発体制を構築するためには、企業、政府、そして社会全体が一体となって、技術革新と政策的な支援、そして新たな視点からのアプローチを推進していくことが不可欠である。鈍化する国内資源開発の現状を直視し、未来に向けた着実な一歩を踏み出す時が来ている。
三井金属鉱業、コーポレート・ガバナンス報告書2025年6月27日版を公開,三井金属鉱業
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