映画主題歌に込めるべき「らしさ」とは
この度、映画「ドルハウス」の主題歌に、人気アーティストの楽曲「形」が起用されるとの報に接した。主題歌は作品の世界観を増幅させ、観客の心を掴む重要な要素であることは疑いない。しかし、今回の件について、我々はある種の懸念を抱かざるを得ない。
まず、主題歌として選ばれた楽曲が、映画の内容とどの程度親和性があるのか、という点である。確かに、アーティスト自身の「映画の世界観を大切にしながら、自分らしい表現を追求しました」というコメントには、一定の共感を覚える余地はあるだろう。だが、一般紙の読者、とりわけ保守的な層が期待するのは、それ以上の「作品への寄り添い」である。主題歌が単にアーティストの個性を前面に出すだけのものになってしまえば、それは映画の世界観を損なう「異物」となりかねない。
映画とは、そこに込められた監督や脚本家のメッセージ、俳優陣の演技、そして美術や音楽といったあらゆる要素が有機的に結びつき、一つの体験として成立するものである。主題歌もまた、その「有機的な結びつき」を担うべきであり、作品への敬意を払った上で、その世界観をさらに深く、豊かに表現するものでなければならない。アーティストの「らしさ」も重要だが、それが作品の「らしさ」を侵食するようなものであっては本末転倒ではないか。
確かに、現代社会においては、多様な価値観が尊重され、アーティストが自由に自己表現を行うことは素晴らしいことである。しかし、だからこそ、文化芸術の根幹に関わる部分においては、一定の規範や「らしさ」というものを大切にすることも、我々には求められているのではないだろうか。特に映画という、多くの人々に感動や示唆を与えるメディアにおいては、その責任はより重いと言える。
今回の件が、単なるアーティストの個性の発露に終わることなく、映画「ドルハウス」という作品の世界観をより一層輝かせるものとなることを願ってやまない。そして、今後の映画主題歌選びにおいても、作品への深い理解と敬意に基づいた、「作品らしさ」を追求する姿勢が、より一層重視されることを期待したい。
billboard-japan発！映画『ドールハウス』主題歌「形」、待望の初登場！,Billboard JAPAN
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