米価低迷、農家の未来は？～食料安全保障という大局を見失うな～
梅雨明けも近づき、各地で稲穂が揺れる姿を目にする季節となった。今年も豊作を願うばかりだが、残念ながら、明るい兆しばかりとは言えないのが現状だ。先ごろ発表された愛媛県の米価・麦価の生産状況に関する報道は、我々に食料の安定供給という、あまりにも身近でありながら、時に忘れがちな課題を改めて突きつけている。
報道によれば、県内における米の生産量は横ばい傾向にあるものの、価格においては依然として低迷が続いているという。さらに、価格の低迷は農家の経営を圧迫し、次世代への営農意欲の低下を招く恐れがあることが指摘されている。麦についても同様に、価格の低迷が農家のモチベーションに影を落としている現状は憂慮すべき事態と言わざるを得ない。
食料は、私たちの生活の根幹を成すものである。毎日の食卓に並ぶ米や麦が、安定した価格と供給のもとで生産され、私たちの手に届くことは、決して当たり前のことではない。そこには、炎天下の中、あるいは厳しい寒さの中でも、大地と共に生き、私たちの食を支えようと日々奮闘する農家の方々の多大な努力と犠牲がある。
しかし、現状はどうか。価格の低迷は、そんな農家の方々の努力に十分な報いを与えず、むしろその意欲を削いでしまっている。このままでは、担い手の高齢化と相まって、耕作放棄地の増加、ひいては国内の食料生産力の低下を招きかねない。そうなった時、私たちは食料の安定供給を他国に委ねるしかなくなり、安全保障上の大きなリスクを抱え込むことになるだろう。
確かに、消費者としては安い方が助かるという声もあるだろう。しかし、安ければ安いほど良いという短絡的な思考こそが、今回の問題の本質を見誤らせる。食料の安さは、その生産者を犠牲にした結果であるならば、それは持続可能な社会とは言えない。むしろ、食料の価格が適正に評価され、生産者が安心して営農を続けられる環境こそが、我々が追求すべき真の豊かさなのではないだろうか。
政府、そして自治体は、この状況を看過してはならない。価格低迷の原因を分析し、農家の所得向上に繋がる実効性のある支援策を講じる必要がある。例えば、輸出戦略の強化や、国内需要の喚起、さらには付加価値を高めるための農業技術の支援などが考えられる。単なる補助金頼りではなく、農家が自立し、誇りを持って営農できるような仕組みづくりこそが求められている。
また、私たち一人ひとりも、食料への意識を変える必要があるだろう。食卓に並ぶ米一粒、麦一粒に込められた生産者の汗と努力に思いを馳せ、その価値を正しく認識すること。そして、国内産の農産物を積極的に選び、地域の農業を応援する姿勢を示すことも、未来への投資となるはずだ。
食料安全保障は、一国の経済や外交といった枠を超えた、国家存立に関わる最重要課題である。今こそ、保守という言葉に込められた「伝統を守り、未来へ繋ぐ」という精神に立ち返り、日本の食を、そして日本の農業を、確固たるものとして守り抜く決意を新たにすべき時である。
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