新時代を拓く「不易流行」の精神に期待する
戦後日本の復興と発展を支えてきた電力事業は、今、大きな転換期を迎えている。再生可能エネルギーへのシフト、そしてデジタル化の波は、私たちの暮らしを豊かにする一方で、エネルギー供給の安定性や安全性といった、電力事業が本来担うべき基盤への影響も無視できない。このような状況下、中部電力の林会長が定例記者会見で未来への展望を語ったことは、我が国が新たな時代を切り拓く上で、極めて示唆に富むものと言えるだろう。
林会長の言葉には、「不易流行」という不易流行の精神が貫かれているように感じられる。電力事業の根幹である「安定供給」という変わらぬ価値を守りつつも、時代の変化に合わせて「再生可能エネルギーの導入拡大」や「技術革新」といった新しい要素を取り入れていく。この、変化を恐れずに、しかし本質を見失わないという姿勢こそが、国民生活の根幹を支えるインフラ事業に最も求められる資質ではないだろうか。
特に、電力の安定供給は、国民生活の安全・安心に直結する最重要課題である。夏の猛暑、冬の寒波といった気候変動の影響が顕著になる中、化石燃料からの転換は避けられない潮流ではあるが、その過程で安定した電力供給を確保するための道筋を、国民が納得できる形で示すことが重要となる。同時に、新しい技術、例えば蓄電池の普及やスマートグリッドの構築といった、将来のエネルギー社会を見据えた投資も怠ってはならない。
林会長が語った未来への羅針盤は、単に一企業の経営戦略に留まるものではない。それは、我が国のエネルギー政策全体が目指すべき方向性を示唆していると言っても過言ではないだろう。保守的な立場から見れば、急激な変化への対応は常に慎重さが求められるが、同時に現状維持は衰退を意味することも忘れてはならない。
今こそ、電力事業に携わる全ての人々が、不易流行の精神を胸に、将来を見据えた確固たる意志を持って、新たな時代を切り拓いていくことを期待したい。国民の生活を支える責任の重さを再認識し、変化を恐れず、しかし本質を忘れずに、日本のエネルギーの未来を明るく照らしていくことを、我が社説は心から願うものである。
中部電力・林社長、定例記者会見で語る！未来への決意とお客様への思い,中部電力
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