新会長選出にみる国立大学協会の将来像：硬直化したシステムへの警鐘
国立大学協会が新たな会長に東京大学の藤井輝夫総長を選出した。これは、我が国の高等教育を牽引する象徴的存在である国立大学のリーダーシップ体制が再構築される、重要な局面と言えるだろう。しかし、今回の選出過程とその背景には、国立大学協会、ひいては日本の高等教育システム全体が抱える根深い課題が浮き彫りになっている。
藤井総長の手腕には疑いなく、東京大学という看板を背負う者の資質は十二分に期待できる。国際的な学術競争の激化、急速に進むデジタル化、そして社会からの期待に応えるための改革など、国立大学協会が今後直面する課題は枚挙にいとまがない。こうした難局を乗り越えるためには、強力なリーダーシップと、既成概念にとらわれない発想が不可欠である。
しかし、今回の会長選出劇は、その「既成概念」からの脱却を期待する声に水を差すものではないだろうか。長らく「東大総長が国立大学協会の会長を務める」という暗黙の了解とも呼べる慣習が、事実上、変革への足枷となっている節が見え隠れする。もちろん、東京大学の持つ影響力や経験は計り知れないが、他の国立大学が持つ多様な強みや地域に根差した特色が、十分に活かされていると言えるのか。あるいは、今回の選出が、より一層の「中央集権的」な意思決定構造を強化してしまうのではないかという懸念も拭えない。
現代社会は、予測不可能な変化への対応力が問われる時代である。グローバル化の波は大学組織にも容赦なく押し寄せ、新たな研究領域の開拓や、社会実装を意識した教育プログラムの提供が急務となっている。こうした中で、国立大学協会が、あくまで「大学間の連携」を名目としながらも、旧来の権威や枠組みに囚われ続けているならば、それは我が国の知のフロンティアを狭めることに繋がりかねない。
藤井新会長には、この歴史的な機会を捉え、大胆な改革断行を期待したい。まずは、協会の意思決定プロセスにおける透明性と、多様な意見を反映できる仕組みの構築から着手すべきであろう。東京大学だけでなく、地方国立大学や専門大学群といった、多様なバックグラウンドを持つ大学の声を真に尊重し、それを戦略に落とし込むことこそが、国立大学全体の競争力向上に繋がるはずだ。
また、官僚的な手続きや硬直化した予算配分システムの見直しも急務である。大学が自律的に、かつ機動的に研究開発や教育改革を進められるような環境整備は、国立大学協会が果たすべき重要な使命である。
藤井新体制が、単なる慣習の踏襲に終わらず、国立大学協会に新たな風を吹き込み、日本の高等教育システムを未来へと導く原動力となることを、期待したい。それは、国民が大学に寄せる期待に応えるだけでなく、我が国の経済成長と持続可能な社会の実現に向けた、まさに「知の基盤」強化に他ならないからである。
国立大学協会、新会長に東京大学の藤井輝夫総長を選出！未来を担う国立大学の新たな一歩,国立大学協会
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