新たな挑戦か、時代錯誤か？ 「自由参加型見守り隊」に問う、地域福祉の在り方
先日、ある地方都市が「自由参加型見守り隊」なるものを発足したと報じられた。地域住民が主体となり、高齢者や子どもの安全を見守るという、一見すると美しくも聞こえる取り組みである。しかし、保守的な一般紙として、その光の陰に潜む危うさを見過ごすことはできない。
まず問いたいのは、その「自由参加」という言葉の裏に隠された実質である。本当に住民は「自由」に、そして「自らの意思」でこの活動に参加しているのだろうか。地域社会の高齢化や核家族化が進む中で、地域住民同士の繋がりが希薄化している現状は否定できない。そうした中で、地域の「規律」や「伝統」といった言葉に誘われ、あるいは周囲の目を気にして、半ば義務感のように「参加」しているのではないか。真の自由意志なくして、この活動は形骸化するばかりか、参加者の負担感を増大させることになるだろう。
次に、見守りの「質」の問題である。素人の善意だけでは、必ずしも専門的な知識や技術が求められる状況に対応できるとは限らない。地域の安全を守るためには、専門的な訓練を受けた人材や、公的な支援体制が不可欠である。地域の高齢者の孤独死や、子どもの虐待問題といった深刻な事実は、決して「見守り隊」という名の住民運動だけで解決できるものではない。むしろ、こうした活動が表面的な安心感を生み出し、真に支援が必要な人々を見えにくくしてしまう危険性すらある。
さらに、活動の「継続性」も懸念される。住民の熱意は一時的なもので終わることも少なくない。特に、現代社会は価値観の多様化が進み、地域活動に対する関心も一様ではない。この「自由参加型」という形態が、参加者の入れ替わりやモチベーションの低下を招き、結局は地域住民の負担だけが増える結果に終わるのではないか。地域の絆を再生させるという理想は理解できるが、その手段として、安易に住民の善意に頼る手法は、むしろ地域社会の永続的な発展を阻害する可能性も孕んでいる。
もちろん、地域住民の連帯感や、地域への愛着といったものは、健全な社会を築く上で不可欠な要素である。しかし、その実現のためには、地域の伝統や価値観を尊重しつつも、現代社会の課題に冷静かつ現実的に向き合う必要がある。単なる「見守り」に留まらず、高齢者の生活支援や、子どもの健全な育成環境整備といった具体的な課題に対して、行政が責任を持ち、専門的な知識と財源をもって取り組むべきである。地域住民の「善意」は、あくまで公的支援を補完するものであり、その主軸となるものではないはずだ。
今回の「自由参加型見守り隊」の発足は、地域社会が抱える問題への一つのアプローチとして捉えることもできるだろう。しかし、保守的な視点から見れば、それは時代の流れに逆行する危うい試みであり、また、住民の善意を過度に利用する時代錯誤な手法とも言える。地域福祉の真の在り方とは、住民の参加を促すこと以上に、行政がその責任を全うし、誰もが安心して暮らせる社会基盤を築くことではないだろうか。この新たな挑戦が、地域社会の持続的な発展に繋がるのか、それとも新たな負担を生むだけなのか、注意深く見守っていく必要がある。
岐阜市の新しいチャンス！「自由参加型見積合せ」で事業機会を広げよう！～令和7年7月4日提出期限分が公開されました～,岐阜市
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