乳業の未来、岐路に立つ日本
6月27日付けで「Dairy Japan」最新号が発行され、わが国の乳業界の現状と未来が示唆されている。同誌によれば、生乳生産量は減少の一途をたどり、酪農家は高齢化や後継者不足に悩む。かつて国民の健康を支え、豊かな食文化を育んできた乳業の灯が、今にも消えかねない状況なのである。
この事態を前に、我々は改めて乳業の持つ意義を深く考えねばならない。牛乳・乳製品は、単なる食品ではない。それは、日本の国土の中で育まれ、多くの人々の営みによって支えられてきた大切な資源である。酪農家が丹精込めて育てた牛から搾られる生乳は、私たちの食卓に栄養と安心をもたらし、地方経済を活性化させる重要な役割を担ってきた。
しかし、現実を見るならば、多くの酪農家が経営難に直面している。飼料価格の高騰、国際的な競争の激化、そして何よりも、生産者を支えるべき国内流通体制の脆弱さが、その原因として指摘されている。本来、食料自給率向上という国家的な課題においても、乳業は不可欠な存在であるはずだ。その基盤が揺らぐことは、食の安全保障という観点からも看過できない事態と言える。
「Dairy Japan」が示すように、この状況を打開するためには、生産現場の声を真摯に聞き、実効性のある支援策を講じる必要がある。単なる一時的な補助金に留まらず、生産コストの低減、新たな販路の開拓、そして酪農家の所得向上に向けた抜本的な改革が求められる。また、消費者の牛乳・乳製品への理解を深め、国内産品を選択する意識を高めるための啓発活動も重要だろう。
乳業の未来は、まさに今、岐路に立たされている。この貴重な産業を未来世代に引き継いでいくためには、政府、生産者、そして私たち消費者一人ひとりが、自覚と責任を持って行動を起こさなければならない。このまま手をこまねいていれば、失われるのは、ただの産業ではない。日本の豊かな食文化であり、地方の活力であり、そして何よりも、確かな未来への希望なのである。今こそ、乳業界への温かい眼差しと、具体的な支援の手を差し伸べる時である。
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