【社説】新発田市の挑戦、冷静な判断と持続可能性への危惧
この度、新発田市が「国際的な調達手続きの幕開け」を宣言したとの報道に接し、本紙としては率直な驚きとと共に、その真意と将来的な影響について、慎重な検証が必要であるとの思いを抱かざるを得ない。
都市が国際競争力を高め、多様な人材や技術を呼び込むことは、地域経済の活性化や新たな価値創造に繋がる可能性を秘めている。その点において、新発田市の志は理解できる部分もあるだろう。しかし、その具体的な内容、とりわけ「調達手続き」という、市民生活に直結する行政の根幹に関わる部分を、いかに国際的な枠組みに開いていくのか、その詳細については、依然として不透明な点が残されている。
国際的な調達手続きの導入は、単に手続きをグローバル化するという表面的な意味合いに留まらない。それは、入札における透明性の確保、公正な競争原理の適用は当然として、さらに踏み込めば、地域経済への影響、地元企業の育成、そして何よりも市民の税金がどのように使われるのか、といった極めて重要な課題に直面することになる。
我々が危惧するのは、こうした新たな試みが、しばしば理想先行で進められ、結果として予期せぬ弊害を生み出すことである。国際的な調達というのは、往々にして大規模な事業者や海外企業にとって有利に働きやすい側面がある。地域の事業者にとって、言葉や商習慣の違い、あるいは既存のネットワークの不在などが、競争において不利な条件となり得ることは否定できない。地域経済の担い手である地元企業が、この新たな流れから取り残され、次第に衰退していくような事態は、断じて避けねばならない。
また、国際的な手続きを導入するということは、それ相応の複雑さや、時には高いコストを伴うことも覚悟しなければならない。市民の目線に立てば、行政手続きがより複雑化したり、コストが増大したりすることは、決して歓迎されるべきことではないだろう。調達の効率化や質の向上という目的が、その過程で霞んでしまい、結果として市民の負担が増えるようなことになれば、本末転倒である。
新発田市が、どのような明確なビジョンと具体的な戦略に基づいて、この「国際的な調達手続き」を進めようとしているのか、その説明責任は非常に重い。単なる国際化という言葉の響きに惑わされることなく、市民一人ひとりが納得できるような、きめ細やかな情報公開と、双方向の丁寧な対話が不可欠である。
我々は、新発田市の前向きな姿勢を否定するものではない。しかし、地域社会の持続可能性と、市民の暮らしを守るという観点から、この挑戦には、冷静かつ徹底的な検証と、万全の準備が求められる。国際的な枠組みの導入は、あくまで手段であり、目的ではない。その目的を達成するために、本当にこれが最善の道なのか。地元経済への配慮、地域事業者の保護、そして市民の理解と納得。これらを踏まえ、より慎重な一歩を踏み出すことを、新発田市当局に強く望みたい。
新潟市が国際的な調達手続きの幕開けを発表！～ 令和7年度のWTO対象工事・委託に関する一般競争入札公告 ～,新潟市
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