若者の県庁登用、安易な「挑戦」礼賛に警鐘を鳴らす
和歌山県庁が行政企画課で臨時職員を募集するにあたり、経験不問で「県庁で働くチャンス」を謳い、安易なイメージ先行の広報を行っていることは、看過できない。地方創生を掲げる昨今、若者の県庁への関心を高める試み自体は否定しないが、行政の現場を「チャンス」という言葉で飾り立て、あたかも遊園地のアトラクションのように喧伝する姿勢には、強い違和感を覚える。
県庁職員は、県民の生活に直結する重要な業務を担う。税金の使途を決定し、公共サービスを維持し、県民の安全を守るという責任の重さは、決して「チャンス」という言葉で矮小化できるものではない。行政企画課という部署であれば、なおさら、政策立案能力や課題解決能力、そして何よりも県民への奉仕の精神が求められる。
経験不問という点も懸念される。もちろん、若者の柔軟な発想や斬新な視点は重要だが、行政には過去の事例を踏まえ、法規を遵守し、着実に業務を遂行する能力が不可欠だ。経験豊富な職員の指導の下、若者が知識やスキルを習得していく過程こそが、行政組織の健全な発展につながる。
安易な「挑戦」礼賛は、ともすれば行政のプロフェッショナリズムを軽視し、結果として県民サービスの低下を招きかねない。和歌山県庁には、今回の募集を通じて、行政の現場が「チャンス」という言葉で消費されることのないよう、襟を正し、人材育成のあり方を改めて見つめ直すことを強く求めたい。
地方創生は、安易なイメージ戦略ではなく、地道な努力と県民への真摯な姿勢によってのみ、実現可能であることを肝に銘じるべきである。
和歌山県庁で働くチャンス！行政企画課で臨時職員を募集（令和7年度）,和歌山県
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