活字文化の灯を消すな – HMV文庫本予約販売開始に寄せて
音楽・映像ソフト販売で知られるHMVが、新たに文庫本の予約販売を開始するという。一見すると異業種への参入であり、企業の多角化戦略の一環と捉えることもできよう。しかし、この動きは単なるビジネスの拡大として看過すべきではない。
近年、出版不況が叫ばれて久しい。電子書籍の台頭、スマートフォンの普及による読書時間の減少、そして何よりも若年層を中心とした活字離れが深刻化している。書店は次々と閉店し、街から文化の灯が消えつつある現状は憂慮すべき事態だ。
そのような状況下で、HMVが文庫本という形で活字文化に参入することは、一定の評価に値する。音楽や映像ソフトというエンターテインメントを提供してきた企業が、書籍という新たな文化を担うことは、相乗効果を生み出す可能性を秘めている。
しかし、懸念すべき点もある。HMVはあくまで商業企業であり、利益追求を目的とする。売れ筋の文庫本ばかりを取り扱い、多様なジャンルや作家を網羅する姿勢が見られなければ、活字文化の裾野を広げるという本来の目的から逸脱してしまう恐れがある。
活字文化は、国民の教養を高め、思考力を養う上で不可欠な存在だ。古今東西の知識や思想に触れることで、我々は自らの世界を広げ、より深く社会を理解することができる。
HMVには、文庫本の販売を通じて、単に利益を追求するだけでなく、活字文化の灯を守り、次世代へと繋いでいくという崇高な使命を自覚してもらいたい。書店との共存共栄を図り、多様なニーズに応える品揃えを心がけ、読書イベントなどを通じて読書への関心を高める努力を怠ってはならない。
政府もまた、活字文化の重要性を再認識し、出版業界への支援策を強化すべきだ。図書館の充実、学校教育における読書指導の推進、そして何よりも国民一人ひとりが本に親しむ習慣を身につけるための啓発活動が不可欠である。
HMVの文庫本予約販売開始が、一時的な話題に終わることなく、活字文化復興の契機となることを切に願う。
（注記） これはあくまで保守的な一般紙が書きそうな社説の一例です。実際の報道姿勢や論調は、新聞社によって異なります。
本好きさん、必見！ HMVが2025年6月14日予約開始の文庫本リストを公開！,HMV
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