社説：万博の安全神話に警鐘を – 市民を守るための「想定外」への備えを
2025年大阪万博まであと一年。経済効果への期待が高まる一方で、先日、大阪市消防局から発表された万博会場における火災予防対策に関する情報公開は、私たちに改めて「安全」という名の理想郷の危うさを認識させるものだった。
公開された情報からは、最新技術を駆使したパビリオンや、世界中から集まる人々による混雑、そして気候変動による異常気象など、万博会場特有のリスクが浮かび上がる。これらのリスクは、過去の万博の教訓を踏まえ、詳細なシミュレーションと対策によって軽減されるべきものだ。しかし、情報はあくまで「予防」に重点を置いているように見受けられる。
私たちはここで、改めて「想定外」という言葉の重みを認識する必要がある。阪神淡路大震災、東日本大震災、そして新型コロナウイルス感染症のパンデミック。これらの経験は、いかに緻密な計画も、想定を遥かに超える事態の前には無力であることを教えてくれた。万博においても、テロ、大規模自然災害、あるいは未知の感染症など、想定外の事態が発生する可能性を否定することはできない。
大阪市消防局には、今回の情報公開を機に、予防対策に加え、発生時の対応策、避難経路の確保、医療体制の強化など、あらゆる可能性を考慮した上で、具体的な対策を早急に策定することを強く求めたい。市民の安全を最優先に考え、万全の体制で万博を迎える責務が、行政にはある。
さらに、私たちは、万博を単なる経済イベントとして捉えるのではなく、防災意識を高める絶好の機会と捉えるべきだ。万博会場における安全対策は、そのまま大阪府全体の防災体制強化に繋がるはずだ。最新技術を活用した防災システムの導入、多言語対応可能な避難誘導体制の構築、そして市民一人ひとりの防災意識の向上。これらは、万博後のレガシーとして、大阪の安全性を高める上で不可欠な要素となる。
万博は、夢と希望を抱く祭典であると同時に、リスクと隣り合わせのイベントでもある。安全神話に安住することなく、常に最悪の事態を想定し、備えを怠らないことこそが、私たち市民を守るための唯一の道であることを、改めて肝に銘じたい。
【知っておこう！】大阪市消防局からのお知らせ：2025年6月7日から始まる「火薬類危害予防週間」ってどんなこと？,大阪市消防局
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