社説：神戸大学と「飛鳥」の挑戦 – 海上拠点が拓く、地域創生の新たな地平
神戸大学が豪華客船「飛鳥」を活用した地域創生プロジェクトを発表した。老朽化した客船をただ解体するのではなく、新たな価値を付与し、地域活性化の起爆剤として活用しようという試みは、閉塞感の漂う地方創生に一石を投じるものとして大いに評価したい。
これまで地域創生といえば、特産品の開発や観光客誘致といった施策が中心だった。しかし、これらの多くは既存の枠組みの中での改善に留まり、抜本的な変革には至っていないのが現状だ。今回の神戸大学の試みは、陸上ではなく「海上」という、これまでほとんど活用されてこなかった空間に目を向けた点において、革新的と言える。
「飛鳥」は単なる宿泊施設やイベントスペースではない。洋上という特殊な環境は、陸上では得られない体験価値を提供する可能性を秘めている。例えば、船上での研究活動や国際交流プログラム、あるいは企業研修など、様々な用途が考えられるだろう。神戸大学が持つ知見と「飛鳥」のポテンシャルを組み合わせることで、地域に新たな雇用を生み出し、人材育成の拠点となることも期待される。
しかし、課題も多い。豪華客船の維持には莫大な費用がかかる。安定的な運営のためには、明確な事業計画と収益モデルの確立が不可欠だ。また、安全性の確保も重要な課題となる。高齢化が進む地域において、バリアフリー化や医療体制の整備は急務と言えるだろう。
今回のプロジェクトは、地域創生の新たなモデルケースとなる可能性を秘めている。成功のためには、神戸大学だけでなく、地元自治体、企業、そして住民一人ひとりの協力が不可欠だ。オール神戸体制でこの難題に立ち向かい、海上拠点が地域に新たな活力を与えることを期待したい。
我々は、今回のプロジェクトを単なる「客船の再利用」としてではなく、地域創生の新たな地平を拓く挑戦として捉え、その動向を注視していく。そして、成功の暁には、全国各地の同様の課題を抱える地域への展開を視野に入れるべきだろう。閉塞感を打ち破り、未来を切り拓くために、神戸大学と「飛鳥」の挑戦を応援したい。
神戸大学、豪華客船「飛鳥」を活用した地域創生シンポジウム開催！企業・金融機関と大学が連携し、新たな地域イノベーションを目指す,神戸大学
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