中小企業支援策の「無尽蔵」な拡充は、真に持続可能な成長に繋がるか
金融庁が中小企業支援策を拡充し、その規模を「無尽蔵」と表現したことは、喫緊の課題である中小企業の経営安定化に向けた強い決意の表れと評価できる。しかし、安易な資金供給は、企業の自助努力を阻害し、ひいては日本経済全体の活力低下を招きかねないという懸念も拭えない。
今回の支援策は、コロナ禍からの回復が遅れる中小企業や、原材料価格の高騰に苦しむ企業にとって、一時的な救済措置として有効に機能するだろう。特に、事業転換や新規事業への参入を目指す企業にとっては、新たな挑戦を後押しする力強い追い風となるはずだ。
しかし、問題は「無尽蔵」という言葉が示す、過度な依存体質を生み出す可能性である。本来、企業は市場原理の中で競争し、自らの力で成長を遂げるべき存在だ。安易な資金供給は、ゾンビ企業の延命を招き、生産性の低い企業が市場に居座り続けることで、新陳代謝を阻害する。その結果、日本経済全体の成長力を削ぐことになりかねない。
金融庁には、今回の支援策が真に中小企業の成長を促すものとなるよう、以下の点に留意してもらいたい。
- 厳格な審査基準の設定: 資金供給にあたっては、企業の事業計画の実現可能性や成長戦略を厳格に審査し、安易なバラマキにならないように徹底すべきだ。
- 経営改善支援の強化: 資金供給だけでなく、中小企業の経営改善を支援する専門家派遣や経営相談体制の強化を同時に行うべきだ。
- 出口戦略の明確化: 支援策の期間や規模を明確にし、いずれは市場原理に基づいた競争環境に戻るための出口戦略を示すべきだ。
中小企業は、日本経済の屋台骨であり、その活性化は日本全体の成長に不可欠である。しかし、安易な支援は、かえって企業の自立を阻害し、長期的な視点で見れば逆効果となりかねない。
金融庁には、今回の「無尽蔵」な支援策が、真に持続可能な中小企業の成長に繋がり、日本経済全体の活力向上に貢献するものとなるよう、慎重かつ戦略的な舵取りを期待したい。そのためには、目先の救済だけでなく、長期的な視点に立ち、企業の自立を促すための施策を講じることが不可欠である。
金融庁、中小企業を応援！無尽（むじん）のルールを見直し、銀行への指導もアップデート,金融庁
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