若者文化への迎合か、文化継承への危機感か – HMVの週末限定プレゼント企画を憂う
音楽・映像ソフト販売の老舗であるHMVが、週末限定のプレゼント企画を実施するという。若年層へのアピールを目的とした施策であることは容易に想像できるが、このニュースに接し、一抹の不安を覚えるのは私だけだろうか。
長引く不況とデジタルコンテンツの普及により、CDやDVDといったパッケージメディアの販売は苦戦を強いられている。それは理解できる。企業が生き残りをかけ、新たな顧客層を開拓しようと試みるのも当然だろう。しかし、今回のHMVの企画は、その手段としてあまりにも安易に過ぎるのではないか。
プレゼントという甘い誘惑で一時的に顧客を惹きつけることはできても、それが真に音楽や映像文化への理解を深めることに繋がるのだろうか。むしろ、無料で手に入るものに価値を見出すという風潮を助長し、コンテンツそのものの価値を軽視する結果にならないだろうか。
我々が危惧するのは、若者文化への過度な迎合が、伝統的な文化の継承を阻害するのではないかという点だ。音楽や映像は、単なる消費財ではなく、人々の心を豊かにし、社会を形成する重要な要素である。その価値を理解し、次世代に伝えていくことこそが、HMVのような老舗企業の使命ではないだろうか。
もちろん、時代に合わせて変化していくことは重要である。しかし、変化の方向性を見誤れば、企業は足元をすくわれ、文化は衰退の一途を辿る。HMVには、目先の利益に囚われることなく、長期的な視点から文化の継承という重責を担ってほしいと願う。
安易なプレゼント企画に頼るのではなく、コンテンツの魅力を伝えるための工夫、アーティストを育成するための支援、そして、何よりも文化に対する深い愛情と理解を示すことこそが、HMVに求められているのではないだろうか。
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