高齢者講習の充実と免許返納支援の強化を
高齢ドライバーによる痛ましい事故が後を絶たない現状に対し、山口県警が運転免許に関する「聴き取り」活動を強化するという。これは、事故を未然に防ぐための重要な取り組みとして評価できる。しかし、同時に、高齢者の移動手段確保という課題にも目を向け、総合的な対策を講じる必要がある。
高齢者の運転免許返納は、本人の意思尊重が大前提である。長年運転してきた車を手放すことは、生活の質を大きく左右する。特に地方においては、公共交通機関が十分に整備されていない地域も多く、車がなければ生活が成り立たないという高齢者も少なくない。
今回の「聴き取り」活動を通じて、運転に不安を感じている高齢者に対しては、運転免許の自主返納を促すとともに、その後の生活をサポートする体制を整えることが不可欠である。具体的には、公共交通機関の利用促進、デマンド交通の導入、地域住民による送迎サービスの提供など、地域の実情に合わせた多様な移動手段を確保する必要がある。
また、運転免許返納後の生活支援だけでなく、高齢者講習の内容充実も急務である。高齢者の身体機能や認知機能の変化に合わせた、より実践的な講習内容に見直すことで、運転能力の維持・向上を図る必要がある。
さらに、家族や周囲の人が高齢者の運転について話し合う機会を設けることも重要だ。客観的な視点から運転能力を評価し、必要であれば運転を控えるよう促すことも、事故防止につながる。
高齢化が進む日本において、高齢者の運転問題は避けて通れない課題である。高齢者の安全と生活を守るためには、運転免許返納の促進、移動手段の確保、高齢者講習の充実、そして家族や地域社会の連携が不可欠である。今回の山口県警の取り組みを契機に、国、自治体、地域社会が一丸となって、高齢者が安心して暮らせる社会の実現に向けて取り組むべきである。
山口県警からのお知らせ：運転免許に関する「聴聞」が開催されます（2025年5月29日）,山口県警
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