【社説】令和7年度農業共済掛金改定、持続可能な農業への視点を
岩手県における令和7年度の農業共済掛金改定は、農業経営の安定化を図る上で重要な転換点となる。今回の改定は、自然災害リスクの増大や農業を取り巻く環境変化に対応するための、やむを得ない措置であろう。しかし、その影響は県内農業者の経営を直撃する可能性も否定できない。
農業は、食料安全保障の根幹を担う基幹産業であり、地域の活性化にも不可欠な存在である。その農業を支える農業共済制度は、自然災害などによる不測の損害から農業者を守り、経営の安定化を図る重要な役割を担っている。今回の掛金改定は、制度の維持・安定化を図る上で必要不可欠であるとはいえ、農業者の負担増は避けられない。
特に懸念されるのは、今回の改定が、高齢化や後継者不足に悩む小規模農家へ与える影響である。掛金負担の増加は、離農を加速させ、地域農業の衰退を招きかねない。県や関係機関は、今回の改定に伴う影響を十分に考慮し、きめ細やかな支援策を講じるべきである。具体的には、低所得者層への補助金制度の拡充や、農業経営に関する相談体制の強化などが考えられる。
また、今回の改定を機に、農業共済制度のあり方そのものを見直す必要もある。気候変動の影響はますます深刻化し、これまで想定されていなかった規模の自然災害が頻発する可能性も否定できない。従来の制度設計では、十分な補償が難しくなることも考えられる。
今こそ、農業共済制度を持続可能なものとするために、国、県、JAなどが連携し、リスク分散のための新たな仕組みや、民間保険との連携など、多角的な視点から検討を進めるべきである。
同時に、農業者自身も、今回の改定を契機に、経営の効率化や多角化、新たな技術の導入など、自らの経営体質強化に努める必要がある。スマート農業の推進や高付加価値作物の生産など、付加価値の高い農業への転換を積極的に進めることが求められる。
今回の農業共済掛金改定は、岩手県農業が持続可能な発展を遂げるための試金石となる。関係者一同が、危機感を共有し、知恵を絞り、未来に向けた農業の姿を追求していくことが重要である。
岩手県から農業者への重要なお知らせ！令和7年度の病害虫発生予測、早めの対策で大切な作物を守ろう,いわてアグリベンチャーネット
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