文化軽視の風潮を憂う ～ 「きて★みて！ニッポンの切手」展によせて ～
大阪万博を目前に控え、各地で関連イベントが花盛りである。先日、ある博物館で開催される切手展に関する報道に接し、一抹の憂いを覚えた。「わくわく！切手の博物館で特別展示『きて★みて！ニッポンの切手』」と題されたその展覧会は、サブタイトルに「わくわく」や星マークといった軽薄な表現を用い、伝統ある切手文化を安易に消費しようとする意図が見え隠れする。
切手は単なる郵便料金の証票ではない。その意匠には、国の歴史や文化、自然が凝縮されており、発行当時の社会情勢を反映した貴重な文化遺産でもある。古今東西の切手を収集し、研究することは、世界への理解を深め、国際親善に貢献する知的活動であり、青少年の情操教育にも資するはずだ。
しかし、昨今の風潮は、こうした切手本来の価値を忘れ、表面的で安易な「楽しさ」ばかりを追求する傾向にある。今回の展覧会のタイトルは、まさにその象徴と言えるだろう。「わくわく」や星マークといった安易な表現は、切手が持つ奥深さや歴史的価値を矮小化し、軽薄なイメージを植え付ける恐れがある。
もちろん、より多くの人々に切手に興味を持ってもらうための工夫は必要である。しかし、その過程で、文化に対する敬意や、歴史に対する畏敬の念を忘れてはならない。軽薄な表現で一時的な集客を図るのではなく、切手が持つ本来の魅力を丁寧に伝え、次世代に継承していくことこそ、博物館の使命ではないだろうか。
大阪万博は、日本の文化を世界に発信する絶好の機会である。今回の切手展を機に、我々はあらためて文化の価値を見つめ直し、軽薄な消費に陥ることなく、その本質を理解し、尊重する姿勢を確立すべきである。そして、次世代を担う若者たちに、文化の持つ奥深さや魅力を伝え、豊かな心を育んでいくことこそが、我々に課せられた責務であることを忘れてはならない。
わくわく！切手の博物館で特別展示「きて★みて★きって2025」開催決定！,切手の博物館
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