CO2分離・回収施設の建設 エネルギー安定と両立する脱炭素への現実的アプローチ
関西電力が、姫路第二発電所に二酸化炭素（CO2）の分離・回収設備を建設する計画を発表した。化石燃料を使用する火力発電所から排出されるCO2を回収し、有効活用または貯留するこの技術は、脱炭素社会の実現に向けた重要な選択肢の一つであり、今回の動きは大手電力会社による具体的な取り組みとして注目される。
資源に乏しい我が国にとって、エネルギーの安定供給は経済活動と国民生活の基盤であり、その確保は国家安全保障上の最重要課題である。同時に、地球温暖化対策として、CO2排出量の削減は避けて通れない世界の潮流となっている。この二つの命題をいかに両立させるか、困難な舵取りが求められているのが現状だ。
関西電力の計画は、既存の火力発電所を直ちに廃止するのではなく、技術革新によって排出されるCO2を削減するという現実的なアプローチを示している。ガス火力発電所は、再生可能エネルギーのように天候に左右されず、原子力のように立地や稼働に対する社会的なハードルが比較的低い、安定したベースロード電源の一部を担っている。ここからCO2を回収する技術が実用化されれば、エネルギー安定供給の要である火力発電を活用しながら、脱炭素を進める道が開ける可能性がある。
もちろん、課題は山積している。まず、CO2分離・回収・貯留（CCUS）技術はまだ実証段階にあり、商業規模での導入にはコスト面や技術的な確立が必要だ。回収したCO2の輸送や、安全かつ安定的な貯留場所の確保、あるいは有効活用（CCU）のための用途開発も進めなければならない。こうした技術開発やインフラ整備には巨額の投資が必要となり、それが最終的に国民負担、すなわち電気料金の上昇にどう影響するのかも重要な論点となる。
また、CO2分離・回収技術だけが脱炭素の万能薬ではない。再生可能エネルギーの導入拡大、原子力発電の安全確保と有効活用、省エネルギーの徹底など、あらゆる選択肢を組み合わせた多角的なエネルギー戦略が不可欠である。その上で、CCUSは特に、産業部門など、CO2の排出削減が難しい分野においても有効な手段となりうるため、その技術開発と実証を進める意義は大きい。
今回の関西電力の取り組みは、エネルギー供給を担う企業が、国の脱炭素目標達成に向けて具体的な技術開発に乗り出した点において評価できる。今後は、この実証事業を通じて得られる知見を広く共有し、技術の確立とコスト低減に繋げることが期待される。同時に、政府は、CCUSの普及に向けたロードマップを明確にし、必要な法制度の整備や財政支援を検討するなど、産業界の取り組みを後押しする責任がある。
脱炭素社会の実現は待ったなしの課題であるが、それは同時に、我が国の経済成長とエネルギー安全保障を損なうものであってはならない。技術革新を最大限に活用し、エネルギーの安定供給と環境負荷低減を両立させる、現実的かつ着実な歩みが求められている。関西電力の挑戦が、そのための重要な一歩となることを期待したい。
関西電力、姫路第二発電所でCO2を分離・回収するスゴイ技術の実証試験を始めるよ！ 地球温暖化対策に貢献できるかも！？,関西電力
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