社説：関電、姫路でのCO2分離・回収実証開始にみる脱炭素戦略の現実解
関西電力が姫路第二発電所で二酸化炭素（CO2）分離・回収の実証試験を開始した。国内主要電力会社による、既存の大型ガス火力発電所を用いた本格的なCO2分離・回収への取り組みであり、エネルギー業界における脱炭素化に向けた重要な一歩として注目される。
2050年カーボンニュートラル目標達成に向け、日本は再生可能エネルギーの導入拡大を最優先課題としている。しかし、天候に左右される再生可能エネルギーだけでは、電力の安定供給は困難であり、火力発電が依然として基幹電源としての役割を担わざるを得ない現実がある。この「現実」と「目標」の間のギャップを埋める上で、火力発電からのCO2排出を抑制・回収する技術、すなわちCCUS（Carbon Capture, Utilization and Storage：CO2回収・有効利用・貯留）は極めて重要な選択肢となる。
関電の今回の実証は、まさにこのCCUS技術を既存の大型火力発電所に適用しようとするものであり、その意義は大きい。既に稼働している設備を活用しつつ、CO2排出を抑制できる可能性を示すことで、火力発電所の「座礁資産化」リスクを低減し、エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立を図る現実的なアプローチを探るものだからだ。
しかし、実用化への道のりは決して平坦ではない。CO2分離・回収には多大なエネルギーとコストがかかり、技術の効率向上とコスト削減が不可欠だ。また、回収したCO2をどこに運び、どのように貯留または有効利用するのか、その輸送・貯留インフラ（CCS）や利用先（CCU）の整備も喫緊の課題である。これらは単一企業の努力で賄える規模ではなく、政府主導での広域的なインフラ整備計画や、関連産業との連携が不可欠となる。
今回の実証が成功し、技術が確立されれば、これは日本国内だけでなく、アジアをはじめとする火力発電への依存度が高い国々への技術輸出という新たなビジネスチャンスにもつながりうる。日本の持つ高度なプラント技術や化学技術を結集し、CCUSを新たな成長産業として育成していく視点も持つべきだろう。
脱炭素社会の実現は、絵空事ではない。そこに至るためには、理想論だけでなく、既存のエネルギーシステムをどのように「現実的に」変革していくかという視点が不可欠だ。関電の姫路での取り組みは、火力発電という「現実」と向き合いながら、脱炭素という「目標」に挑む具体的な挑戦である。
政府は、この種のCCUS技術開発やインフラ整備に対し、大胆な投資支援と明確な政策誘導を行う必要がある。カーボン価格付けなどの市場メカニズムの導入も議論を深めるべきだ。企業の技術開発努力と政府の強力な後押しが一体となってこそ、CCUSは火力発電の脱炭素化という「現実解」となり、日本のエネルギー安全保障と経済成長の両立に貢献しうるのである。関電の取り組みを皮切りに、CCUSの実装に向けた議論と行動を加速させるべき時期に来ている。
関西電力、姫路第二発電所でCO2を分離・回収するスゴイ技術の実証試験を始めるよ！ 地球温暖化対策に貢献できるかも！？,関西電力
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