高齢者ドライバーの安全対策強化を歓迎するが、拙速な「運転卒業」誘導は避けるべきだ
山口県警が「運転卒業制度」を導入するという。高齢ドライバーによる事故が後を絶たない現状において、安全対策の強化は喫緊の課題であり、今回の取り組みは一歩前進と評価できる。
しかし、私たちは今回の制度設計に、若干の危惧を抱かざるを得ない。
高齢者の運転免許返納を促すことは、事故防止の有効な手段の一つである。しかし、地方においては、車が生活の足となっている高齢者が多い。免許を返納すれば、買い物や通院が困難になり、生活の質が著しく低下する可能性も否定できない。
今回の制度は、運転免許の自主返納を促すだけでなく、運転技能が低下した高齢者に対して、免許の取り消しや停止といった強制的な措置も視野に入れているという。もちろん、危険な運転をする高齢者から運転免許を取り上げることは当然の措置である。しかし、その判断は慎重に行われるべきだ。
運転技能の低下は、加齢による身体機能の低下だけでなく、認知機能の低下も影響する。認知症の疑いがある高齢者に対しては、専門医による診断を義務付けるなど、より丁寧な対応が必要となるだろう。
また、運転免許を返納した高齢者に対する支援策も不可欠である。公共交通機関の充実や、地域住民による送迎サービスの提供など、高齢者が安心して生活できる環境整備が求められる。
今回の「運転卒業制度」が、高齢者の生活を脅かすことのないよう、慎重な運用を望む。高齢者の安全を守りつつ、彼らの尊厳と生活の質を維持するための、バランスの取れた政策を期待したい。
政府は、今回の山口県警の取り組みを参考に、全国的な高齢者ドライバー対策を早急に策定すべきである。その際には、高齢者の意見を十分に聞き、現場の実情を踏まえた、実効性のある対策を講じる必要がある。
高齢化が進む日本において、高齢者ドライバー問題は避けて通れない課題である。私たちは、今回の「運転卒業制度」を、高齢者ドライバー対策の出発点として捉え、より安全で安心な社会の実現に向けて、議論を深めていくべきである。
山口県警が「運転卒業証制度」を導入！ 高齢ドライバーの安全運転を応援,山口県警
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