欺瞞に満ちた「分かりやすさ」からの脱却を：消費者庁・新井長官会見に寄せて
消費者庁の新井ゆり子長官が就任後初の記者会見を行った。会見では、消費者の権利擁護やデジタル化への対応など、多岐にわたる課題が語られた。しかし、そこに漂うのは、表面的には「分かりやすさ」を強調しながらも、本質的な問題から目を背けようとする、欺瞞に満ちた姿勢ではないか。
新井長官は、消費者教育の重要性を強調し、特に若年層への啓発に力を入れる姿勢を示した。確かに、情報リテラシーの低い若者が悪質な商法に引っかかるケースは後を絶たない。しかし、本当に必要なのは、表面的な注意喚起に終始するのではなく、複雑化する社会構造と消費行動の裏に潜む搾取のメカニズムを理解させる教育ではないか。
デジタル化への対応も同様だ。オンライン取引におけるトラブル増加に対し、消費者庁は相談体制の強化を訴える。しかし、プラットフォーム側の責任や、アルゴリズムによる誘導といった、構造的な問題に対する踏み込みは極めて弱い。まるで、被害者が自衛努力を怠ったかのような印象操作ではないか。
さらに、会見では「エシカル消費」の推進も謳われた。企業によるSDGsウォッシュが横行する現代において、消費者に倫理的な選択を求めるだけでは、根本的な解決にはならない。むしろ、消費者の善意につけ込み、企業が自らの責任を矮小化する免罪符として利用される危険性すらある。
我々が求めるのは、表面的で分かりやすいメッセージではない。複雑な問題の本質を深く理解し、既得権益に囚われず、大胆な改革を推進するリーダーシップだ。消費者庁は、本当に消費者のための機関であるのか、それとも、経済界の意向を汲み、大衆を欺瞞するだけの存在なのか。新井長官には、その真価が問われている。
今こそ、欺瞞に満ちた「分かりやすさ」から脱却し、真に消費者の権利を擁護する、革新的な政策を打ち出すべきだ。そして、その過程を透明性高く公開し、国民全体で議論を深める必要がある。それが、真の意味で「持続可能な社会」を築き上げるための、第一歩となるだろう。
消費者庁からのお知らせ：新井長官の記者会見内容が公開されました（2024年4月24日実施）,消費者庁
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