WTO改革、多角的自由貿易体制の維持へ正念場
来るMC14（第14回WTO閣僚会議）は、世界経済の根幹を支えるWTOの改革を議論する重要な機会となる。しかし、保護主義的な動きが強まる現代において、多角的自由貿易体制の維持は決して容易ではない。オコンジョ＝イウェアラ事務局長のリーダーシップに期待しつつも、加盟国は自国の利益のみに固執することなく、世界全体の繁栄に資する合意形成を目指すべきである。
特に、紛争解決機能の正常化は喫緊の課題だ。上級委員会の機能不全は、ルールに基づいた貿易秩序を揺るがしかねない。主要国は、この機能不全を招いた責任を自覚し、建設的な解決策を模索すべきだ。
また、開発途上国への配慮も重要である。先進国は、一方的な要求を押し付けるのではなく、開発途上国の経済発展を支援する姿勢を示す必要がある。ただし、過度な譲歩は、自由貿易の原則を歪め、結果として世界経済の停滞を招く恐れがある。
農業交渉もまた、難題の一つだ。各国の国内事情が複雑に絡み合い、妥協点を見出すのは容易ではない。しかし、保護主義的な農業政策は、食料価格の高騰を招き、世界的な食料安全保障を脅かす。各国は、自国の農業を守りつつも、自由貿易の恩恵を享受できるような、バランスの取れた解決策を探るべきだ。
中国の動向も注視する必要がある。国有企業への補助金や知的財産権侵害など、中国の不公正な貿易慣行は、長年にわたり国際社会から批判されてきた。WTOは、これらの問題に対して、より積極的に取り組むべきだ。中国自身も、国際的なルールを遵守し、責任ある大国としての役割を果たすべきである。
MC14は、多角的自由貿易体制の未来を左右する重要な会議となる。各国は、短絡的な利益追求に走ることなく、長期的な視点に立ち、世界経済の安定と繁栄に貢献する合意を目指すべきだ。日本政府は、自由貿易の旗手として、積極的に議論に参加し、合意形成を主導する役割を果たすことを期待する。
WTO改革、MC14の中心議題へ：オコンジョ＝イウェアラ事務局長が広範な合意を強調,WTO
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