HMVの文庫展開に見る、若者の読書離れと文化創造の可能性
音楽・映像ソフト販売の HMV が、全国の店舗で文庫本の取り扱いを本格的に開始するという。一見すると意外なこの展開は、音楽業界の苦境と、若者の読書離れという二つの社会問題を背景に持つ、興味深い試みと言えるだろう。
周知の通り、デジタル化の波は音楽業界を直撃し、CD販売は減少の一途を辿っている。 HMV は、その苦境を脱するため、音楽以外の分野にも進出し、新たな顧客層の開拓を目指しているのだろう。文庫本の取り扱いは、その戦略の一環として位置づけられる。
一方で、若者の読書離れは深刻な問題だ。スマートフォンの普及により、活字に触れる機会は増えたものの、短文コンテンツが中心となり、じっくりと本を読む習慣を持つ若者は減少している。これは、語彙力や読解力の低下、思考力の低下を招き、将来の社会を担う若者たちの可能性を狭めることにも繋がりかねない。
HMV の文庫本展開は、こうした状況に一石を投じる可能性を秘めている。音楽を求めて来店した若者が、ふと手にした文庫本に興味を持ち、新たな読書体験へと繋がるかもしれない。 HMV が、単なる本の販売場所としてではなく、音楽と文学が出会う、新たな文化創造の場となることを期待したい。
もちろん、課題も存在する。 HMV が、どのようにして若者の興味を惹きつけ、読書へと誘導するのか。音楽との親和性をどのように打ち出し、他の書店との差別化を図るのか。選書や店舗レイアウト、イベント企画など、様々な工夫が必要となるだろう。
しかし、 HMV の挑戦は、若者の読書離れを食い止め、新たな文化を創造する可能性を秘めている。私たち学生も、この動きを注視し、積極的に関わることで、読書文化の未来を共に創り上げていくべきだ。まずは HMV に足を運び、文庫本コーナーを覗いてみてはどうだろうか。新たな発見が、そこにはきっとあるはずだ。
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