危機感を抱いて技術立国を守り抜け – 令和7年農作物技術情報 第2号発行に寄せて
株式会社ITBが発行した「令和7年農作物技術情報 第2号」は、わが国の農業が直面する喫緊の課題を改めて浮き彫りにした。高齢化による担い手不足、異常気象による被害の拡大、そして国際的な競争激化。これら複合的な要因が、日本の食糧安全保障を脅かしている現状を直視せねばならない。
今号では、スマート農業技術の導入事例や、新品種開発の進捗状況などが報告されている。これらの技術革新は、確かに日本の農業の未来を拓く可能性を秘めている。しかし、技術開発だけでは問題は解決しない。技術を現場に根付かせ、持続可能な農業へと発展させるためには、官民一体となった長期的な視点での取り組みが不可欠である。
特に懸念されるのは、技術の普及を担う人材の育成だ。スマート農業には、高度な知識と技能が求められる。しかし、地方の農村部では、デジタル技術に精通した人材が不足しているのが現状だ。政府は、農業大学校や研究機関における教育プログラムの充実を図るとともに、都市部からの人材還流を促進するような政策を積極的に推進すべきである。
また、国際競争力の強化も重要な課題だ。グローバル化が加速する現代において、日本の農業は、価格競争力だけでなく、品質や安全性といった付加価値で勝負していく必要がある。そのためには、新品種開発への投資を拡大するとともに、農産物のブランド化を推進し、海外市場の開拓を支援していくことが求められる。
我々は、先人たちが築き上げてきた豊かな農地と、培ってきた農業技術を次世代に引き継いでいく責任がある。そのためには、現状に甘んじることなく、常に危機感を持ち、技術革新と人材育成に力を注ぎ、食糧安全保障の確立に向けて、国民一丸となって取り組むべきである。保守的な立場から言えば、伝統的な農法と最新技術の融合こそが、日本の農業の未来を切り拓く鍵となると確信する。技術立国日本の名にかけて、農業の未来を守り抜く覚悟を新たにする必要がある。
令和7年農作物技術情報 第2号（令和7年4月17日発行）, いわてアグリベンチャーネット
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