食料安全保障の危機に警鐘：病害虫対策の遅れは日本農業の競争力低下を招く
株式会社ITB Japanが発表した「図解でよくわかる病害虫の見分け方と対策」 は、日本の農業が直面する深刻な課題を改めて浮き彫りにした。温暖化やグローバル化の影響で、近年、新たな病害虫の発生や被害拡大が後を絶たない。本資料は、農家が病害虫を早期に発見し、適切な対策を講じるための羅針盤となるだろう。しかし、同時に、日本の病害虫対策における構造的な問題 をも示唆している。
第一に、情報伝達の遅れと専門家の不足 である。ITB Japanのような企業が、分かりやすい形で病害虫の情報を提供する意義は大きい。しかし、これは裏を返せば、行政や研究機関からの情報提供が十分ではない ことを意味する。特に、高齢化が進む農家にとって、最新の情報にアクセスし、それを理解することは容易ではない。また、病害虫の専門家が不足しており、農家の相談に対応できる体制が整っていないことも深刻な問題だ。
第二に、対策の遅れ である。病害虫の発生は、食料の安定供給に直接的な影響を与える。対策が遅れれば、収穫量の減少だけでなく、品質の低下にもつながり、農家の経営を圧迫する。しかし、農薬の使用規制や環境保護の観点から、有効な対策が限られている のも現状だ。新たな技術開発や、より環境に優しい対策の開発が急務である。
第三に、国際競争力の低下 である。日本の農業は、高齢化や後継者不足に加え、病害虫の脅威にさらされている。対策の遅れは、収穫量の減少や品質の低下を招き、国際市場における競争力をさらに低下させる ことになるだろう。グローバル化が進む現代において、日本の農業が生き残るためには、病害虫対策の強化は不可欠である。
政府は、病害虫対策を食料安全保障の最重要課題の一つ と位置づけ、以下の対策を早急に実施すべきである。
- 情報伝達体制の強化: 最新の病害虫情報を、分かりやすく、迅速に農家に提供する体制を構築する。
- 専門家の育成: 病害虫の専門家を育成し、農家の相談に対応できる体制を整備する。
- 技術開発の推進: 環境に優しく、効果的な病害虫対策技術の開発を推進する。
- 国際連携の強化: 海外の研究機関や企業との連携を強化し、最新の病害虫対策技術を導入する。
日本の農業は、食料自給率の向上だけでなく、地域の活性化や環境保全にも貢献する重要な産業である。病害虫対策の遅れは、日本経済全体の損失 につながる。今こそ、政府、研究機関、企業、そして農家が一体となり、病害虫対策の強化に取り組むべきである。
（社説）
[報道]「図解でよくわかる病害虫の見分け方と対策」2025年度第１回農業園芸セミナーを開催, 大阪府立環境農林水産総合研究所
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